冬の感染症
今回は、「感染症」に関するお話をしようと思います。
この2年程は、新型コロナウイルス感染症にばかり目がいきがちであったと思います。
正直、私もコロナ感染にばかり意識がいっており、病院勤務者として反省しなくてはいけません。
コロナ渦であっても、感染症は他にも1年を通じてたくさん存在します。
その中で、冬の代表的な感染症の1つに、「ノロウイルス感染」があります。
今回はその「ノロウイルス感染」について取り上げてみようと思います。
ノロウィルス
寒くなってくると、よく「ノロウイルス感染」という言葉を耳にすると思いますが、みなさんはどのくらい「ノロウイルス感染」についてご存じでしょうか。
よくご存じの方もそうでない方も、これから流行する季節だからこそ改めて確認していただきたいと思います。
経路と症状
ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、1年を通して発生していますが、特に冬に流行するので、これからの季節注意が必要です。
ノロウイルスの感染経路は、ほとんどが経口感染です。手指や食品などを介して口から感染したり、ヒトからヒトへの飛沫感染、汚染された二枚貝を生あるいは十分加熱しないで食べた場合などです。
ヒトの体内に入ったウイルスの潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、ヒトの腸管で増殖し、嘔吐・下痢・腹痛などを引き起こします。
通常、これらの症状が1~2日間続いた後治癒し、後遺症もありません。
しかし、子供やお年寄りなどでは重症化したり、嘔吐物が誤って気道に入り、詰まらせて死に至ることもあります。
現時点では、インフルエンザのように予防接種のワクチンがなく、治療といっても嘔吐や下痢による脱水に対する点滴等の対症療法となってしまいます。
従って、まずはノロウイルスに感染しないために、予防対策の徹底が必須です。
予防対策
ノロウイルス感染者の糞便や吐物には大量のウイルスが排出されるので、
- 食事の前やトイレの後などには、必ずハンドソープでしっかり手を洗いましょう。
- トイレの水を流す時は、フタをして流しましょう。
- 感染者の糞便や吐物の処理は適切にし、感染を広げないようにしましょう。
ノロウイルスは新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスと異なり、アルコールが効きません。
0.1%次亜塩素酸ナトリウム→ハイター10ml(ペットボトルキャップ2杯)を水500mlで薄め、ペーパータオル等で拭きとり、10分後水拭きする。
よく、換気をしてください。
- 手洗い場やトイレのタオルは感染者と分けましょう。
- 加熱が必要な食品は、中心部までしっかり加熱しましょう。
尚、ウイルスは、感染から1週間程度糞便中に排出され続けるので注意が必要です。
ちなみに
では、日本では1年間でどのくらいノロウイルスによる食中毒が発生しているかご存じですか?
ここ数年は減少傾向にありますが、例年10,000人前後の感染報告があります。
年間10,000人というと、結構多いと思いませんか?この大半が冬の数ヶ月の間に発生してます。
もし、感染が疑われる状況になったら、ノロウイルス感染かどうかを判断するため、便の検査を実施することがありますが、疑わしい患者さん全員が保険適用で検査できるわけではありません。
保険適用で検査ができるのは、3歳未満・65歳以上の方等が対象となっています。それ以外の方は、保険適用がなく全額自費での診療となり、高額な請求となることがあります。
しかも、ノロウイルスに感染していても陽性とならない場合もあり、ノロウイルスに感染していないことの証明にはなりません。
おわりに
ノロウイルスに感染してしまうとしんどいだけでなく、高額な医療費がかかるかも知れないし、まわりの大切な人に感染させてしまうかも知れないのです。
したがって、まずは感染しないように普段から予防対策をしっかりしておくことが重要です。
それでも、もし感染が疑われる場合には、保健所やかかりつけ医にご相談ください。
当院での受診希望時は、まずお電話にて症状等お伝えいただきますようお願いいたします。
他の患者様や病院スタッフへの院内感染を防ぐ為、別室にて対応させていただいておりますのでご了承下さい。
長期間、新型コロナウイルスに振り回されてみなさんお疲れだとは思いますが、このままインフルエンザやノロウイルス感染等にも気をつけていただき、健康に過ごしていただければと思います。
大島病院 感染対策委員会